2013年9月10日火曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その175



車のシートのことではない、と願いたい。




三人寄ればもんじゃを食えさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q. 飲み会で和気あいあいと盛り上がってる時、「あれ?その話俺だけ知らないんだけど…」ってなってしまった場合、どんな顔をしていればいいのでしょうか?


おきもち、よくわかります。僕が所属するフラインスピンレコーズにはSUIKAというレーベルの大黒柱的バンドがありまして、かつて彼らが脇目もふらずガシガシ活動していたころは、こういうことが本当によくありました。知らない話だけならまだいいのですが、呼ばれて行ってみたら知らない人がいて、紹介されないまま挨拶するタイミングを逃し、気がつくとそのまま数年たったりして、そうなるともう何度も顔を合わせているせいか今さらあらためて挨拶もしづらく、お互いなんとなく目線を交わして「ええ、あの、存じております、一応。ふふふ」と微笑み合うこともしばしばです。

これにはもちろん逆も、というのはつまり何度も紹介されているのに、なぜか次も必ず紹介されたりするケースもあります。この場合の対応もやはり同じように「ええ、あの、存じております、一応。ふふふ」と微笑み合うことになるわけですが、いずれにしても身の置き所に困ることはたしかです。僕は基本的な社交性が先天的に欠けているので飲み会についてはよくわかりませんが、認識としてはだいたいこんなところで合ってるんじゃないかとおもう。合ってますか?

「自分だけ知らない」というのは不意打ち感もあって、下手をするとたんこぶのようにしばらくひりひり痛みます。訊きゃいいじゃないの、とおもう人もあるかもしれませんが、そう言えるのはこの状況を「自分だけ知らない」ではなく「まだ聞いてない」と認識できるからです。状況が同じでも捉え方が根本から異なっているわけですね。コップの中の水を「もう半分」とみるか「まだ半分」とみるか、そのちがいがこんなところにも表れていると言えましょう。

これは純粋に思考回路の問題です。「自分だけ知らない」を「まだ聞いてない」に置き換えることができるなら、もちろんそれにこしたことはありません。ただ理屈ではわかっていてもおいそれとは置き換えられないから心細いのだし、そんな臨機応変が身についているのなら初めから苦労はしません。そういう意味では「気にすんなよ!」と明るく肩を叩いたっていいわけですが(ときにはそれが必要なこともある)、しかしこれは体毛の濃い人が薄い人に「すべすべすんなよ!」と言うようなものであり、そりゃもうどうしたってムリがあります。すくなくとも、体毛を濃くするにはそれなりの時間が必要です。言われたその場でにょきにょき生やせるものではない。

流れでなんとなく突っ込んだ話になってしまったけれど、そこまで深刻な質問ではない、ですよね本来これは?「あれ?ちょ、あれ?」くらいの戸惑いですよね?

しかし思考回路の問題であることに変わりはありません。ひょっとしたら他にも知らない人がいて、何食わぬ顔で話を聞きつつ、ボロが出ないようにうまく合わせているだけかもしれないのに、なぜ知らないのは自分「だけ」だとおもうのか?

今回のポイントはここです。果たしてその話は本当に全員が知っている話なのか?

もちろんそうなのかもしれません。しかし一方で、それがはっきりと確かめられることもありません。そうかもしれないし、そうでないかもしれない。具体的に言うとつまりそこには一人、あるいはそれ以上のダウトがまぎれているかもしれない、ということです。この不確定性にはなんだか希望があるような気がしてきませんか?

気を落ち着けて、よーく周りを見渡してみましょう。人数が多ければ多いほど、じつは同じように「あれ?」とおもっている人が、他にぜったい1人はいるはずです。

あいつか…?いや、こいつか?こいつがダウトか?ちがうな、やっぱりあいつだ、ジョッキをあおるペースが急に増えた気がする、あーもう絶対そうだこれ、まちがいない、まちがいかもしれないがそもそも心理的ダメージを回避するのに正しさなんて初めからこっちの知ったことではない。


A. というかんじで心理戦にのぞむ勝負師の顔をしていればよいのです。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その176につづく!



0 件のコメント: