2015年9月19日土曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その226

ゲーム画面みたいに現実感のうすい公園


歴史の転換点にさしかかろうと、ここの唯一にして最大の理念ともいうべき「キープレフト」にしたがって、いつもと変わらずいつもと同じような話をお送りします。

フリューゲル保温さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士が適当につけています)


Q: 物事を長く続けるコツってなんですか。


そうですね、われわれも渋々とはいえ気づけばいいかんじにこう大人になってきたことですし、ここはひとつオフレコということで、露出狂のようにガバリと胸襟をひらくといたしましょう。長くつづけるコツを知りたいとのお尋ねですが、そんなものはありません。あるのはただ、つづくか、つづかないか、その2つだけです。あれ、読みまちがいかな、とおもわれたらいけないので念には念を入れてもう一度、断固たる口調ではっきりと申し上げましょう。ないったらないのです。

さぞかしガッカリされていることでしょう。かく言う僕も数十年に渡りさんざんガッカリさせられてきたので、そのへんは心得ています。いやまったく、じつにガッカリです。そう肩を落とさずに一杯おやりなさい。

たしかにシュリーマンはそれまで神話と考えられていたトロイアの痕跡を発見しました。しかしだからと言ってこの広い世界のどこかにアトランティスが埋もれているということにはなりません。ないとは言わないけれども、どこにあるかは誰にもわからない。もっと信憑性の高そうな邪馬台国でさえそうなのだし、だとしたら物事を長くつづけるコツも同じです。あるかもしれないし、ないかもしれない。あまり思いつめても身体に毒です。

あるいはシュリーマンの顰みに倣って、世界中を探し回るのもよいでしょう。いつかどこかで物事を長くつづけるコツが、もしくはその欠片が、土の中からひょいと顔を出して歴史を塗り替える可能性もないとは言えません。そのためには、あきらめずに根気づよく、つづけることが肝心です。長くつづけるために必要なものが長くつづけないと見つからない、とはまた蛇がしっぽをくわえたウロボロスみたいな話ですが、あれこれ考えこんでもしかたがありません。ころころと転がるようにして前進あるのみです。

愉快な詭弁はさておき、たとえば僕は毎度こんな長ったらしいテキストをつづっておきながら、日記をつけることができません。今までに何度となくトライしてきましたが、ことごとく失敗に終わっています。長く書くとくたびれるし億劫にもなるから、1日1行だけにする、というルールを適用してさえ難儀です。毎日だから負担になるのかもしれないとおもって書けるときだけ書くことにしたら、案の定ゆるやかな下降線を描いてきれいにフェイドアウトしていきました。気づいたときには「そういえばそんなこともあったなあ」となつかしい思い出になっていたくらいです。

ハードルを下げるどころか取っ払ってもこうなのだから、コツもへったくれもありません。世界中のありとあらゆるコツがかき集められたとしても、片っ端からぜんぶ打ち砕く自信があります。この繊細なガラスの靴を履けるシンデレラがどこにいるんだ、いるなら出せと拡声器で言いたい。

とはいえもちろん、何もかもがつづかないというわけではありません。ガラスの靴をぶんぶん振り回す僕にも、それなりにつづいているものがあります。リーディングなんかもそうですね。ではなぜそれらはつづいているのかあらためて考えてみたところ、ある共通点に気がつきました。それは「そもそもつづけようとして始めていない」ということです。それでつづくようならつづくし、つづかないものは知らぬ間に消えます。そしておそらく、これがすべてです。

したがって、しいてここから結論を導き出すなら、こういうことになります。


A: つづけようとおもわないことです。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その227につづく!

0 件のコメント: