2015年10月25日日曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その229


日付変わって本日がオントローロであることなどおくびにも出さず、ギンギラギンに際限なくさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士が適当につけています)


Q: 「恋の病」に罹ったことがないのでわからないのですが、どのような甘酸っぱい症状が我が身に降り注いでくるのでしょうか?


なるほど、それはある意味、幸運と言えるかもしれません。というのも恋の病は最悪の場合、死に至るからです。古い小説を読むかぎりでは、会いたくて会いたくてふるえまくったあげく本当に命を落としたりしているし、嫉妬だけでもしょっちゅうくらりと気を失っています。恋ってすてきね!と一般的には捉えられがちですが、アルコールだって覚せい剤だって浴びるようにじゃぶじゃぶやっているときは恋と同じように天にものぼるきもちであることを忘れてはいけません。そしてどちらも、終わりを迎えたあとにのこるのは抜け殻か、でなければ屍です。これらはいずれも脳内物質の放出過多による機能不全であり、ぜんぶひっくるめて中毒と呼ばれます。

甘酸っぱいのは良性の初期症状のみです。あちこちに転移して全身に恋が回るともはや手の施しようがありません。末期になると、最終的に何をどうしたいのかまったくわからなくなるほど、前後不覚に陥ります。何を訊いても「わかんない!わかんないよ!」と耳を塞ぐようになったら要注意です。破滅への坂道を転がり始めていると言ってよいでしょう。

こうした劇的な最期を避けるためにも、甘酸っぱい初期症状の何たるかをあらかじめ知っておいて損はありません。

たとえば、好きな人にふれられるとそこからビリビリと電流が迸ります。反射的に距離を置くことになるのであまり大事にはなりませんが、長時間ふれると黒焦げになって煙が出るほどの電圧です。生命の危機を脱したことによる鼓動の高鳴りと血圧の上昇は、ときめきとして好意的に解釈されます。甘酸っぱさは常に死と隣り合わせなのです。

他にも

・頬、もしくは尻が赤くなる
・もやもやする
・ラブソングがやけにしみる
・ため息が熱くなる
・男ぶりや女ぶりが上がる
・町中で恋する相手の苗字とか漢字がいちいち目につく
・よそのカップルに対する許容度が上がる
・ラインの通知で真っ先にその人が思い浮かぶ
・今まで気にもしなかった特定の1日が警報のように点滅し始める

といった症状が見られます。なかでももっとも顕著な例として知られているのが「ストロー反応」です。ストローというのはジュースその他を飲むときに使うアレですが


恋に罹患した人が手にすると、ストローはひとりでにこうなります。


フォークや箸も同様です。


いやいやそんなん、なったことないよと笑う人は、まだ恋に落ちていないか、発症する前の潜伏期間にあるか、でなければその間ストローを手にしていなかったかのいずれかです。油断していると人前でもストローはくねくねと平気で曲がり始めます。それまでひた隠しにしてきた恋心が白日の下にさらされる危険もあるので、十分注意してください。


A: ストローが可愛くなります。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その230につづく!


0 件のコメント: