2015年11月5日木曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その232

なんか怪物がいるみたい


ポーンコタージュさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士が適当につけています)ポーンがたっぷり入ったコタージュのことですが、パッと見だとこれでまちがってないような気もしますね。


Q: お掃除、好きですか?好きな場合はその理由を教えてください。釣られて私も好きになるかもしれないので。私は掃除が苦手で嫌いで、修行だと思ってやるようにしてます。掃除なんてどこかに放り出してだらだらしてたい。


先にお答えしてしまうと、残念ながらとくに好きではありません。修行だとおもってする点も同じです。とくに僕の場合、これはもうどっからどう見ても修行だよと言い切れる正当な理由があります。なんとなれば、うちには掃除機がないからです。

一人暮らしをはじめるときに買ったシンプルな掃除機を20年ちかく買い替えもせずにブイブイ言わせてたんだけれど、あるとき突然沈黙して、泣く泣くお別れすることになりました。2年前のことです。愕然とさせられたその経緯も当時ここに記録として残しています。

長年連れ添った気さくな掃除機とお別れした理由

ちなみにこれはときどき「掃除機+ホース+ちぢむ」でググられた方がうっかり辿り着いて、何も有益な情報が得られないことに舌打ちしてお帰りになる罠みたいなエントリでもあります。

ともあれ、以来うちには掃除機がありません。代わりにその役目を果たしているのは、ホウキグサを編んだ見目も麗しい箒と、雑巾です。掃除となったらせっせと床を掃き、せっせと水拭きしています。

言うまでもなくものすごい手間です。やたらと時間がかかります。夏は汗だくになるし、冬はとにかく水が冷たい。これが修行でなくてなんでしょう。新しい掃除機を買ったほうが早いし、楽なのはまちがいありません。

にもかかわらず2年たっても箒と雑巾を使っているのは、ひとつにはこれで掃除機のノズルなんかお話にならないくらい部屋の隅々まで行き届くこと、電気を使う必要がないこと、あといちばん大きいのはホコリがまとまりとして目に見えることにハッとさせられたからです。

考えてみればずっと当たり前のように掃除機を使っていたので、たまりゆくホコリの量を把握したことなんてありません。掃除機の吸いこみがわるくなったら紙パックを交換するだけです。全体としてどれくらい汚れていたのかもぜんぜん気にならない。そこで暮らしている以上はどうしたって無視できないはずのものなのに、掃除機が相手をしてくれるから意識の端にも上らずにいたのです。

ところが箒はそれまで見ずにいたホコリを赤裸々に集めてくれます。日によって量もちがうし、よく見たら質もちがいます。どちらかというと冬よりも夏のほうが多いとか、窓を開ける頻度だったり数日留守にしたり新陳代謝の度合いなんかでも変わりそうだけど、ある種のバロメーターになるとだんだんわかってくるのです。そういや風つよかったもんな、とかね。知っているようでまったく知らずにいた暮らしの痕跡にはあらためてしみじみと感じ入るものがあります。

では掃除が好きになったかというと、ふしぎなことにそうでもありません。せいぜい以前よりちょっと前向きになったという程度です。きれいになったらやっぱりうれしいけど、でもしないですむならそりゃそのほうがいいよな、と今でもおもいます。いちど掃除が好きな人に訊いてみたことがあるけれど、「だってきれいになるし」と言われました。うん、まあ、そうだよねと全面的に同意した上での苦手だから、掃除におけるイエスとノーの間には何か埋めがたい溝が横たわっていると言っていいでしょう。

だとすればこの溝をなくす手はひとつしかありません。


A: 掃除好きな人をつかまえていっしょになることです。


ホウキ生活をおすすめするわけではなくて、結果的に僕の性に合っていたというだけの話です、もちろん。



質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その233につづく!

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