2016年5月11日水曜日

新卒採用を夢見る安田タイル工業の面接風景


「一大事だぞ、主任」
「どうしました、専務」
「就職希望者が殺到して窓口がパンクした」
「なんですって!安田タイル工業に?」
「そうなんだ」
「窓口どころか実態もないのに?」
「大わらわだよ」
「大笑いじゃなくて?」
「何を言うんだ、みろこの汗を」
「うわっびっしょりじゃないですか!」
起きたらすごい寝汗だった
「ひどい夢でしたね」
「完全に想定外の事態だったよ」
「想定する必要がないですから」
「しかしこの際、準備しておくにこしたことはないだろう」
「何のですか?」
「面接のだよ」


「何から訊きます?」
「好きなトラックメイカーは誰ですか」
「トラックメイカー!?」
「なんだ、いけないのか」
「それ、たとえば誰を挙げると好印象なんですか」
「サラームレミとか……」
「昔からほんとブレませんね、専務」

注:サラーム・レミ(Salaam Remi)……専務が心酔するヒップホッププロデューサー。風呂上がりのヤクザみたいなドラムの音色に熱狂的なファン多数。

いちばん有名なのはたぶんこれ


「tofubeatsとかPumpeeって言われたらどうするんですか」
「なるほどって言うよ」
「内定出しても蹴られそうですね」
「ミス・スパンコールはマッドリブを挙げていたぞ」
「あの人も何気にいい年ですから」
「じゃあ何を訊けばいいんだ」
「好きなタイルとか……」
「あっおもいだした」
「タイルの会社ですからね、一応」
「風呂場のタイルが剥がれてたんだ、そういえば」
「専務の家の風呂はどうでもいいんですよ」
「修繕しないと」
「試したらいいじゃないですか」
「何を?」
「食用タイル」

注:「安田タイル工業のかなり重要な会議」(小林大吾「小数点花手鑑」収録)を参照のこと。

「食用か……」
「なにかマズいんですか」
「マズいと言えばすごくマズい」
「味の話じゃないですよ」
「剥がれた箇所が排水溝のそばなんだ」
「排水溝か……」
「できれば今際の際まで目を背けていたい」
「ふつうはそんなところ食べるとか考えないですからね……」

せっかくなので願掛けして帰りました。



水に溶けると龍神さまに願いが届くらしい

2 件のコメント:

s8 さんのコメント...

ごぶさたしています。
すごくどうでもいいことですが、長崎の生活にも慣れ、自炊が楽しい今日この頃です。
にしても深川さん達筆ですね!

ピス田助手 さんのコメント...

> s8さん

そうか長崎だったんですね。
お元気そうでよかった!
お肉ばっかり食べてちゃダメですよ。