2017年11月11日土曜日

OK Google、オタンコシャリコの意味を教えて!


のっけから薮から棒で恐縮ですが、今日ここを訪れたごく少数のみなさまはとても運がいいと申さねばなりますまい。なんとなれば日々、膨大な量のデータが砂時計の砂よりも早く積もっていくネット上にかつて一度も記されたことのない単語が、ここに初めて刻まれることになるからです。

今日よりのち、この単語を検索する人がいればまず100%、真っ先にここへ辿り着くことになりましょう。言ってみれば先日発見された「タパヌリ・オランウータン」のように、新種の生物の発見とその発表をここで行うようなものです。つい先月までどこにも記載のなかったこのオランウータンが電光石火でウィキペディアにきっちり追加されていることを考えると、これがいかに重大であるかは想像に難くありません。

とまあそんなあだしことはさておきつ、岩波文庫のとある一冊を読んでいたら見慣れぬ単語にぶつかったのです。


オタンコシャリコって何だ?

と首をかしげつつそのときは何となくスルーしていたのですが、数日後にふと思い出してググってみると


検索結果がまさかの0件です。

今は辞書も検索できるから、ググって出てこないということは辞書にも載っていないということです。でも、そんなことってあるだろうか?こんな、当たり前みたいに使われてるのに?

とおもって念のためウチにあるぼろぼろの広辞苑を引っぱり出してみたところ


近いのは「おたんちん」「おたんこなす」しかありません。どっちもろくな単語ではない。

しかしそうなると問題なのは「まるで意味がわからない」という点です。「オタンコシャリコ」とその半分が重なっていることからして、おたんこなすに近いような気もしますが、使われている前後の文脈からするといまいちピンときません。あらためてここに抜き出してみましょう。

「……ソコはどっちも色気たっぷりで、金を貸す代り、肉体を貸せ、お伝はソンなことは、オタンコシャリコですから、蔵前へ誘い出して、肉体を任したが、サテ吉蔵はというと、古着渡世なんですから、勘定は細かく、至って抜目がないんですから、肉体は借りた、金は貸さない、よくある図で、お伝を遊んでやったくらいに心得たのが、どうしてどうして毒婦なんですから、黙っちゃア引退らない。」

痴情のもつれから愛人を殺めた明治の妖婦、高橋お伝の話ですね。お伝については滅法べんりなウィキペディアを参照いただくとして、オタンコシャリコについて言えばどうも「お手のもの」あるいは「いつものこと」みたいな意味合いで使われているようにおもえます。すくなくともおたんこなす的なことではない。いつものことがおたんこなすなら、おはようとおやすみくらい人生の大部分がおたんこなすです。

いえ、おたんちんとかおたんこなすについてはここでは触れません。きもちはわかるし僕もそうでしたが、うっかりググったらそっちはそっちでなかなか興味深い俗説があって戻ってこれなくなりそうだったので、ひとまず忘れましょう。でもたぶん、オタンコシャリコとはあまり関係がないとおもう。いや、あるんだろうか?

一方「お手のもの」という意味合いから連想されるのは「あたりきしゃりき」という言葉です。これは辞書にも載っています。要は「当たり前」の粋な言い回しですね。近いと言えば近いような気もするし、ちがうと言えばちがうような気もする微妙な距離感です。ただ「あたりきしゃりき」の「しゃりき」は語呂合わせらしいので、オタンコシャリコの「シャリコ」も単に語感からくっつけられただけの可能性はあります。

とはいえオタンコシャリコからシャリコを取ったらオタンコであって、また茄子に逆戻りです。茄子はもういい。

そしてここまで書いといてなんですが、結論はありません。出す気もありません。すべて明快で疑問の余地がない世界より、こんなちいさな謎がころころと転がっている世界を、僕は好みます。誰も知らない言葉が確かにある、そのこと自体、世界にはまだあちこちうろつく甲斐があることを、僕らに教えてくれているじゃないですか?


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